一級建築士のエピソード

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私は設計で一番面白い所は、エスキースが出来上がるまでだと思います。
何にもない敷地に自分の頭であれこれ考えて、平面図が出来るまでの行程です。実際に目に見える形で現れるのは、せいぜい簡単なスケッチが一枚程度ですが、頭の中では完璧に理想的な家が完成して、それをあらゆる角度から眺めているのです。この後の作業は空想を実在化させるための地道な作業で、苦労もたくさんありますが、全ては最初に夢みた建物のための避けられない行程です。その一番面白い所は、一般住宅の場合は当たり前ですが施主と一緒で、というよりもあくまで施主のために、あれこれ打ち合わせして希望を伺い、施主の希望以上(希望がそのまま反映されただけでは設計担当者のいる意味はなく、施主が自覚なしに希望しているものまで汲み取ってプランに反映させるのがプロ)のプランを提案するのが住宅設計の醍醐味です。これは一級建築士になったから出来るというものではなく、各人の努力と経験の積み重ねによってしか得られないものですが、その仕事に就くための入口には一級建築士の免許がぶら下がっています。

自分よりも人生経験豊富な施主のアドバイスがきちんと出来るには、まず信用していただかないと話になりませんが、一級建築士の信用はその点、なかなかのものです。一級建築士があれば一人前の専門職として認めてもらえます。これは案外、男性よりも女性の方が有利かもしれません。「えっ?あなたが一級建築士持っているの?」と驚き感心されれば、あとの打ち合わせはスムーズに進みます。その後、一度得た信用をどこまで引き止めておけるかはまた別の話ですが。私の場合は、茶道という、日本で建築をやる上で必須といわれる味方があったから、特に茶室がほしい人、畳の大きさにこだわる人からは評価いただきました。一番嬉しかったのは「儂の家は君の設計でないと駄目だね」と言われたことです。その方はとにかく和室にこだわり、京間も狭くて駄目、と言われるので、京間より更に大きい畳の寸前に合わせてプラン作成を繰り返しました。とおりいっぺんの知識に加えて、これは絶対に出来る!という得意分野があれば強いです。

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